Kristen Stewart主演作。
原題;Snow White & the Huntsman
2012年6月1日 アメリカ公開。
2012年6月15日 日本公開。
期待、しすぎちゃったなぁ。
朝露に浮かぶ「光彩」を、紡いだ糸で織りあげたかような、溢れんばかりの、極彩色の世界観。
まがまがしくも美しい、女王の衣装。
「鏡よ鏡。」をおどろおどろしく、かつ艶めかしく視覚化。
情感をゆさぶるドラマティックなサントラ。
(クワガタの角で出来た襟。カブトムシの羽から作ったドレス。鴉の羽根(模造品)でできた漆黒のマント。など、衣装トリビアはコチラに詳しく。)
映像美に音楽美と、私の視覚と聴覚を、十二分に納得させる内容であったにも関わらず、本作を観て、心を突き動かされることはなかった。
私の場合、その理由はSnow White。つまり主人公にある。なんと致命的な理由だろうか。
Ravenna女王の新統治のもと、独裁国家と化した国。女王の圧政は、地上に永遠の闇夜をもたらした。
底なしの暗黒。腐敗。堕落。絶望。もはや、一条の、かすかな光を求める心すら失ってしまった国民。
その、彼ら彼女らが、Snow Whiteに接し、Snow Whiteの優しさ、慈しみの深さ、思いやりの温かさ、そして不屈の強さに癒され、鼓舞され、自らの命をSnow Whiteに託して、彼女と共に女王を倒そうと決起する。
そこに私は、確固たる説得力を見出すことが出来なかったのだ。
問題は、脚本にあったと考える。
本作に置いて、Snow Whiteの崇高な精神は、彼女の周囲の人間の「証言」によって立証される。
彼女と出逢って「強く優しかった、愛する亡き妻を思い出し、すさんだ魂を癒された」と語る、The Huntsmanであったり。彼女と交わって「かつての誇りを取り戻した」と語る、七人の小人たちであったり。
或いは、彼女を前にして、凶暴なるトロールすら、自然ひれ伏したり。妖精界の主までもが、彼女にこうべを垂れたり。
Snow Whiteの貴い精神を物語るのは、主として「周囲の言動」なのである。それも、Snow White自身の言動よりも、はるかに雄弁に。
妖精からは祝福され、そして、人生の落伍者を、正義と愛に満ちた、誇り高き戦士へと立ち直らせるほどの、美しい魂の持ち主Snow White。
だがしかし、個人的には、Snow White自身の言動から、彼女の貴い魂の確証を得るには足らず、あいまいな説得力を前に、ダイナミックに物語に感情移入することが出来なくなってしまった次第である。
しかしながら、女王に扮するCharlize Theronの演技は、一見に値した。
見目麗しい女優は、得てして、その「美貌」が足枷となり、画一的な役柄をオファーされがち。結果、役者としての「のびしろ」を断たれてしまう事がある。
だが彼女の場合、その「美貌」を「演技の糧」にしているのだ。
本作では、人間の「愚かさ」「醜さ」を、それとはおよそ対極にある「美」を器に露呈させた。
美しい彼女が表現することで、人間の醜悪が、より鮮明に浮き立つ。さらには、その裏にひそむ「苦しみ」「哀しみ」「絶望」「悲愴」「痛み」すらも表してみせる。
ありのままの、美しい外見をもってしても、人間の内面を、グロテスクなまで露わにし、奥深くまで表現することのできる、演技力も美貌も類まれな女優であると、改めて思った次第だ。
『モンスター』でアカデミー主演女優賞を受賞した際、美貌をかなぐり捨て、大幅な体重増量と特殊メイクを施したことに世間の注目は集まったが、受賞の要因が彼女の演技力にあることは、この作品での彼女の演技を観ても明らかだ。
本作におけるCharlize Theronの存在は、かなりの要である。邦題は『スノーホワイト』、原題は『Snow White and the Huntsman』であるが、『Ravenna』としても良かったくらいの存在感であった。
言うまでもなく、この王子は、女王の変身した姿。
このシーンの王子は、純朴で清純な本人とは、似ても似つかぬ妖艶な美しさをたたえている。
Snow Whiteの捜索→逃亡→帰還と、長引く旅路で、土埃にまみれた肌は何処へやら。
肌は雪より白く、陶器のように滑らかで、唇は血のように紅い。(最初は、変身した女王とは気付かず、「あれ?寒くて血の気ひいたん?」と。まんまと騙されました笑)
「こ、この御方こそ、白雪姫やーん!」と心の雄叫び。
ただし、真っ青な瞳は、凍てつくように寒々としていて、但し書きに「『白鳥の湖』の黒鳥ver.な白雪姫」って書かなアカンけど。
Snow Whiteが毒牙にたいそうお苦しみの最中にも関わらず、独り「黒鳥ver.な白雪姫」に萌ゆる梅雨。ケッタイな観客で、誠にゴメンナサイ。
***
アメリカのTrailerを観て期待値を高め過ぎてしまったのがイケなかった。
私個人の結論を述べる事をお許し頂けるのであれば
「予告編が最高潮でした。それでも我慢できない御方は、DVDレンタルをお待ちになっても宜しいかと存じます」。
「その際は、是非とも、上記の妖艶な王子を、連続リピートでお楽しみ頂ければと存じます。」
以上です。