Michael Fassbender出演作。
原題;Angel
2007年3月14日 ベルギー、フランス公開。
2007年12月8日 日本公開。
強烈な嫌悪感と、羨望と。
【あらすじ】
1900年代初頭のイギリスの下町で、母親とともにほそぼそと暮らすエンジェル(ロモーラ・ガライ)は、あふれんばかりの想像力と文才が認められ、16歳にして文壇デビューを果たす。幼いころからあこがれていた豪邸“パラダイス”を購入し、ぜいたくで華美な暮らしを始める。そんな中、彼女は画家のエスメ(ミヒャエル・ファスベンダー)と恋に落ちるが……。
(CINEMA TODAYより)
■夢を現実に。本能の赴くまま、人生を突き進むAngel
幼き日より憧れ続ける豪邸『Paradise』を見つめるAngel |
なぜなら「夢」は、たんなる「絵空事」にすぎぬから。
「夢」を見つづけるなど、子供じみた「妄想」にすぎぬから。
多くの人間は、そう自らを諭して「夢」を諦める。
しかしながら、主人公Angelは、途方もなく壮大な「夢」を突き進む。
『Paradise』を手に入れるAngel |
「夢」の実現のために、一心不乱に人生を疾走するAngel。
そんな彼女の生きざまは、まさに「竜巻」そのもので、「夢」を現実としていく過程で、彼女は無意識のうちにも、周囲の人々を次々に巻きこむや、その人生を流転させ、挙げ句の果てには破滅させてしまうのだ。
野放図。無遠慮。身勝手。破壊者。エゴイスト。我利我利亡者。Angelを表現するに、悪名は事欠かない。
観客は当然、Angelに強烈な嫌悪感を抱くであろう。
だが一方で、利己主義を極めた天真爛漫な生きざまと、「夢」を見事、具現化していく姿に、観客は、不本意ながらも羨望を覚えてしまうのだろうか。
むかむかとする不快感に身悶えしながら、結局、エンドロールまで、しかと観てしまった次第だ。
社会モラルを逸脱したAngelの生きざまは、決して褒められたものではないが、「共存」「協調」を旨とする人間社会において、Angelのエゴイズムは、ある意味、感嘆に値する。
■Angelの人生を彩る、装飾品
左からEsméサマ |
愛で結ばれたかに思えたAngelとEsmé。
しかしながらEsméは結局のところ、彼女の『Paradise』を彩るための、最高の宝飾品に過ぎなかった。
Angelが「愛」と表現したEsméへの感情は、私に言わせれば「束縛」であり「所有欲」でしかない。
Esméサマの寝姿 |
だがしかし、その車椅子が彼にもたらしたのは「自由」に非ず、更なる「支配」であったに相違ない。
Angelの「所有欲」の象徴としての車椅子。
かようなEsméが、自らの存在は、Angelの「所有欲」を満たすがための「豪奢な所有物」に過ぎないと悟った時の絶望たるや、察するに余りある。
死を選ぶ以外に、彼が、Angelの呪縛から解き放たれる術はなかったのであろう。何たる非劇。
■特異な映像美
壮麗な絵巻物というよりも、豪華な紙芝居を見ているような映像美。
虚飾に彩られた、Angelの「張りぼての人生」を表すに相応しい演出だ。
■「最高の宝飾品」の名に相応しい、美しの国のファス殿
中々御目にかかれぬ、センターパートヘアなファス殿。
そしてそして、長く濃い睫毛に縁取られた寝顔の美しさたるや。眼福です。
蛇足ではございますが、Angelと芦田愛菜嬢の面立ちが被る場面が御座いまして、ビックリ致しました。
個人的には、DVDを購入して、何度も繰り返して観たいと思う種の映画ではありませんでした。
んが!ファス殿のハンパネー色男ぶりたるやぁ。
「そりゃぁAngelの度を過ぎた所有欲を発動させても致し方あるめーなぁ。」
そう思えるほど、ファス殿の美しさは、「一見」どころか「必見」の価値あり!で御座いました。以上。