2012年12月23日日曜日

Michael Fassbender in 『SHAME -シェイム-』鑑賞。




Michael Fassbender主演作。
原題;Shame
2011年1月22日 アメリカ公開。
2012年3月10日 日本公開。


存在することの痛み。




【あらすじ】
ニューヨークに暮らすビジネスマンのブランドン(マイケル・ファスベンダー)は、プライベートのすべてをセックスに費やしているほどのセックス中毒状態。そんなある日、ブランドンのアパートに妹のシシー(キャリー・マリガン)が転がりこんでくる。恋愛依存症でリストカット癖のあるシシーとの生活で、二人は激しくぶつかるようになり……。
(CINEMA TODAYより)


■叶わぬ想い。絶てぬ命。

永遠に叶えられない渇望を抱いた人間は
永久に埋められない喪失感を抱いた人間は

ありとあらゆる自傷行為をもってして
自らをすすんで厳罰することで
深層で暴れ狂う渇望と喪失感を抑圧し
自身の均衡を辛うじて保っている。

兄Brandonは、セックスという名の自傷行為によって。 妹Sissyは、リストカットという名の自傷行為によって。

兄妹愛を超えた「愛」を乞う兄。
惜しみなき無償の「兄妹愛」を乞う妹。

決して交わることのない、兄妹の切実なる願い。

彼らの、身を切り裂くような渇望が
命を削るような喪失感が

胸を突き刺すように伝わって来た。

『SHAME -シェイム-』は、観客の深層心理をダイレクトに揺さぶり
観客を自失させるほどの衝撃をもった映画であった。

***

誰にも打ち明けられぬ、身を焦がすような渇望に苦しみ悶える、全ての人に捧ぐ映画。
絶対に満たされぬ喪失感に絶望し、暗澹たる日々を過ごす、全ての人に捧ぐ映画。

Brandonは、そんな貴方を投影した姿です。

***

かえすがえすも残念なのが、日本版はモザイク処理を施していること。

剥き出しの性器をありのままに映すことは、本作において、主人公の「自己の拠り処」を示す、大切なメタファーである。

決して、邪な興奮を誘うための装置ではない。

モザイクをかけることは即ち、本作の根幹を穢すことであり、本作に対する冒涜に他ならない。

配給会社に異を唱えたい。