2012年5月13日日曜日

『ベイビーズ - いのちのちから - 』鑑賞。




原題;Bébé(s)
2010年6月16日 フランス公開。
2012年5月5日 日本公開。


ただ生きている。
それだけで、人生は、かくも輝きに満ちている。

そのメッセージが、全編から溢れ出している映画。





ナミビア、モンゴル、東京、アメリカ。
異なる環境で誕生した「命」の、それぞれの1年間を追ったドキュメンタリー。


ユニークなのが、赤ちゃんの周辺で交わされる会話に
一切、字幕がつかないという点。


当然、それらはすべて、現地の言語なので
私の場合、ナミビアとモンゴルの会話の内容は、全く分からなかった


ただそれは、赤ちゃん当人にも言えること。


まだ言葉を解さない赤ちゃんにとっては
周囲の人々の表情口調声音が、すべて。


観客は上映時間79分の間、赤ちゃんを『疑似体験』するのである。


***


目に映るものすべてに、瞳を輝かせる。


好奇心に満ち満ちた彼らにとっては、何もかもが不思議


我々にとっては、すでに「当たり前」で、特段、関心を示すに値しない事柄も
彼らにしてみれば、宝石のような輝きを放つ、「驚くべき出来事」


映画を通じ、赤ちゃんフィルターを通して世の中を再見してみると

自分たちの生きる世界が、いかにワクワクドキドキキラキラに溢れた
ワンダーランドであったかに、はたと気づかされるのだ。


***


それにしても、赤ちゃんの笑顔の、何と愛らしいことか。

笑顔は、ほっぺから、瞳から、くちびるから、こぼれ落ちそうなほど。

中でも、ナミビアの赤ちゃんは、まるで地上に舞い降りたエンジェル




興味深いのが、文明の利器の受容反比例して
赤ちゃんと、そして親の笑顔が、曇っていくように思われること。


無論、私の勘違いかもしれないが。。


人間の快適性を追求した産物
人間の幸福を剥奪しているのだとしたら…


人間とは、不幸な生き物だ。


***


終始、赤ちゃん時間で進む本作。
時に冗長に感じてしまうのは否めない。


それもこれも、効率性合理性を重視した資本主義に飼いならされ
毒されてしまった結果なのかもしれない。


人生讃歌を味わえるとともに
生き方を問い直す機会を与えてくれる。


それが『ベイビーズ -いのちのちから- 』の魅力の一つであろう。