原題;Bébé(s)
2010年6月16日 フランス公開。
2012年5月5日 日本公開。
ただ生きている。
それだけで、人生は、かくも輝きに満ちている。
そのメッセージが、全編から溢れ出している映画。
ナミビア、モンゴル、東京、アメリカ。
異なる環境で誕生した「命」の、それぞれの1年間を追ったドキュメンタリー。
ユニークなのが、赤ちゃんの周辺で交わされる会話に
一切、字幕がつかないという点。
当然、それらはすべて、現地の言語なので
私の場合、ナミビアとモンゴルの会話の内容は、全く分からなかった。
ただそれは、赤ちゃん当人にも言えること。
まだ言葉を解さない赤ちゃんにとっては
周囲の人々の表情、口調、声音が、すべて。
観客は上映時間79分の間、赤ちゃんを『疑似体験』するのである。
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目に映るものすべてに、瞳を輝かせる。
好奇心に満ち満ちた彼らにとっては、何もかもが不思議。
我々にとっては、すでに「当たり前」で、特段、関心を示すに値しない事柄も
彼らにしてみれば、宝石のような輝きを放つ、「驚くべき出来事」。
映画を通じ、赤ちゃんフィルターを通して世の中を再見してみると
自分たちの生きる世界が、いかにワクワクとドキドキとキラキラに溢れた
ワンダーランドであったかに、はたと気づかされるのだ。
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それにしても、赤ちゃんの笑顔の、何と愛らしいことか。
笑顔は、ほっぺから、瞳から、くちびるから、こぼれ落ちそうなほど。
中でも、ナミビアの赤ちゃんは、まるで地上に舞い降りたエンジェル。
興味深いのが、文明の利器の受容に反比例して
赤ちゃんと、そして親の笑顔が、曇っていくように思われること。
無論、私の勘違いかもしれないが。。
人間の快適性を追求した産物が
人間の幸福を剥奪しているのだとしたら…
人間とは、不幸な生き物だ。
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終始、赤ちゃん時間で進む本作。
時に冗長に感じてしまうのは否めない。
それもこれも、効率性と合理性を重視した資本主義に飼いならされ
毒されてしまった結果なのかもしれない。
人生讃歌を味わえるとともに
それが『ベイビーズ -いのちのちから- 』の魅力の一つであろう。