2012年7月31日火曜日

『今日と明日の間で』鑑賞。




2012年1月7日 公開。

息を呑む美しさ。

得も言われぬ風韻。

生と死を超越した神秘美。

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「ため息」「感嘆」「荘厳」「幽玄」「厳粛」「壮麗」を凝縮した、1時間28分。





【CHECK】
世界的に著名な振付師モーリス・ベジャールやマシュー・ボーンらに愛され、国際的に活躍するトップバレエダンサー首藤康之を追ったドキュメンタリー。2010年に行われたすべてのステージと練習風景や、周囲の言葉を交え、孤高の天才ダンサーの知られざる素顔と、バレエに人生をささげてきた彼の思いを映し出す。本作では、今の首藤を表現すべく本作のため新たに振付けられたソロダンス「Between Today and Tomorrow」のテーマ音楽を、「東京事変」やCMなどの活躍が目覚ましい椎名林檎が手掛けている。
(CINEMA TODAYより)


【STORY】
世界を舞台にトップバレエダンサーとして活躍する首藤康之。9歳からバレエ人生をスタートし、15歳で東京バレエ団に入団して以来バレエに人生のすべてを懸けてきた彼が、自らの胸の内を明かす。「時の庭」「空白に落ちた男」など2010年の全ステージと練習をはじめ、親交の深いダンサーや振付家の証言を交え、首藤の知られざる素顔に迫る。
(CINEMA TODAYより)


本作のために創られた、冒頭のソロダンス作品。
常軌を逸する美しさに、誤解を恐れずに言うならば、全身が戦慄き(わななき)震えた。
神々しい美しさに、畏怖の念を抱かずにはいられなかった。

一瞬にして劇場全体の空気を掌握する、圧倒的なオーラ。
一度観たら最後、幕が下りた後もなお、観客の心を掴み続けて離さぬ、強力な磁力。

そんな、舞台での首藤氏の「神がかった魅力」を写し撮ると共に
氏の「たおやかな魂」を、余計な説明を付加せず、ありのままに追ったドキュメント。
それが本作だ。

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舞台上の首藤氏を観ていると
カメラを通してですら、ぴんと張り詰めた、限界ぎりぎりの緊張感に襲われる。

ただそれは、神経衰弱に追いこまれるような
弾けば、たちまち切れてしまうような、そんな緊張感ではない。

伸縮性があり、柔らかな、心地の良い緊張感なのだ。
観ていて自然、居住まいを正したくなる、清らかな緊張感なのだ。



それはつまり、首藤氏がバレエのみならず、生きることに対しても「求道者」であるからであろう。

本作では、首藤氏自らの口から、また共演者の口から、その「求道精神」が存分に語られる。

首藤氏は、自分を厳しく律し、欲望に流されず、ストイックで一途で、一心不乱な求道精神の持ち主である。
だがそれは、他者を一切受けつけず、自らの意見に固執するような、頑迷固陋な求道精神ではない。

彼の「扉」は、いつも開かれている。
未知なるモノの来訪を拒まず、時には、自ら「未開の地」に足を運び、開墾し耕し、新たな「芽」を育む首藤氏。

首藤氏の、そうした、たおやかな求道精神に触れ続けた1時間28分。
丸まった、心の「背筋」に、一本の軸が通り、凝り固まった魂が、揉みほぐされていくのを実感した。

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本作については、DVD化のみならず、Blu-ray化も強く希望したい。

神に祝福されしダンサー・首藤康之氏の、圧巻のバレエおよび、その存在感を
高画質の映像で、擦り切れるほどに堪能したい。

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バレエのみならずダンスに少しでも関心のある方に。
そして、人生を探求することの「意味」を模索している方に。
オススメしたい、そんな一作だ。