2013年12月13日金曜日

中里友香氏の本が面白い。




確か、新聞の書評か何かで『カンパニュラの銀翼』を知ったのがきっかけだったと記憶しているが、実際に本を手にしてみて、中里氏の独特の筆力にガッチリやられてしまった。

まずマイッたのが、句読点の妙味。高潔かつ知的でありながらも、隙間隙間から、甘美な喘ぎ声が漏れ聞こえてくる、そんな息遣いなのである。知性と本能は言うなれば「水と油」、相容れない要素なのだが、それらを見事、独特のリズム感と息遣いで調和させてしまう辺り、中里氏の筆才にたまげた。

そして、選び抜かれた粒ぞろいの言葉たち。丹念に磨きこまれ、一分の狂いもなく、然るべき場所に然るべくして配置された言葉の一つ一つが、誇り高くも気高い知性と、目の眩むような艶麗な色気を放っている。

中里氏が描く世界は、隅から隅まで緻密に構築され、「美しさ」と「いかがわしさ」が、しっくりと共存共栄しているのである。

そして特筆すべきなのが、ことの本質を見抜く、圧倒的な審理力。世のことわりや倫理観に潜む偽善と欺瞞を、一刀両断に切り裂き真相を露わにする、鋭利にして深遠な思想にも満ちているのだ。

12月13日現在、紙媒体で書籍化されているのは『黒十字サナトリウム』、先述の『カンパニュラの銀翼』『黒猫ギムナジウム』『コンチェルト・ダスト』(以上、刊行順)の4冊。



『人を動かす 【新装版】 』D・カーネギー著




不動のロングセラー本には、それだけの価値と意味があると実感。
渇いた土に染み込む慈雨のように、一文一文が、逐一、心に響く本である。

人を動かすためには先ず、自分がどうあらねばならないかを、豊富な実例と、淀みない人物伝に乗せてレクチャー。
「人を動かす立場に非ず」と言って、この本を読まないのならば、それは余りに勿体ない。
人間社会の中で、生き辛さを覚え、アイデンティティの確立に思い悩み、劣等感に苛まれている全ての人に、この本は最適な指針を示してくれる。

夫婦、親子、友人、職場といった、ありとあらゆる人間関係から、育児、商売、はたまた治世における心得まで、人生のあらゆるシーンに適用される、まさに「人生のバイブル」的啓蒙書であった。